とらの徒然

ネコ科のペンギン

就活と安寧(最終回)

前回↓

r-tryangel.hatenablog.com

 

 

就活が安寧を奪うとか、安寧を齎すとか、そんなものはどちらでもよい。

正解はたった一つ。

 

 

「内定が安寧を齎す」だ。異論はなかろう。

 

 

さて、おれの就活も終わりを迎えた。

思い通りに行ったこと、行かなかったことと色々あったわけだが、一番の誤算は、資格が全くもって役に立たなかったことだ。

不動産に関する資格を大学2年のときに取って、漠然と不動産業界に属する将来を描いていたら、あろうことかESで蹴られGDで蹴られ、最終的にはノリで受けた金融業界に就職である。

わけがわからない。

人生は思い通りにいかないとはよく言ったものである。

 

 

いや、少し違う。

必ずしも「やりたいこと」と「向いていること」が一致しないことに気づいていなかっただけだ。

おれは不動産業をやりたがったが、仕事内容はおれ向きではなかった。

営業で外回りをして、巧みな話術と駆け引きで土地や物件を仕入れることがおれにできるだろうか?

否である。

思えば、不動産業界は選考にGDを入れていることが多かった。それは、集団の中でも埋もれない「個」を求めている証拠であり、率先して発言、誘導するスキルが必要になる。

おれはGDに通ったことが一度もない。向いていなかったのだ。

 

 

一方で、就活生側が一人の面接は、すべて合格している。

きちんと話す機会が確保されれば、おれは落ち着いた対応ができるし、強みも活きるということだろう。

忘れないうちに面接でされた質問をメモしておこうか。

とはいえ忘れてるものも沢山あるだろうけども。

 

 

難易度★

お名前と自己紹介をお願いします。

よく言われることだが「自己紹介≠自己PR」を認識していればこれほど容易い質問はない。

自分を大きく見せず、単にステータスを述べればいいのである。この際、後々PRで使えそうな要素を散りばめておくのが賢いだろう。

例えばバイトで特殊な経験があるのならバイトをしていることを話すといいし、ゼミでの経験を持ってきているのなら、どんな研究をしているかに触れるといい。

 

 

学生時代に最も力を入れたことはなんですか?

所謂ガクチカ

思い返せば、おれは何を頑張ってきただろう。何も頑張っていないじゃないか。

そんなことはわかってんだ!みんなそうだ!捻りだせ!

この質問は言い換えれば「苦労したことはなんですか」だ。それに対してどのような対処をしたかをアピールすることが重要。

そしてかなり細かい部分まで突っ込まれたり、「こういう解決策じゃダメなん?」とか「それだと〇〇なことにならない?」とか面倒なことを言われたりする。解決策にはきちんと理由をつけておくべきだ。

当然ながら嘘はバレるので注意されたい。違う場面の出来事を、あたかも一つの出来事かのように繋ぎ合わせて語るのはOKである。名付けて「経験のパッチワーク」

さらに気をつけねばならないのが「二番目に頑張ったことは?」の追撃。ただ、用意していれば怖くない。三番目は来ないだろう。

 

 

学業で力を入れたことはありますか。

学業に限定してくることもある。確かに、ゼミに入っていないと答えにくそうな質問ではある。おれは一般に頑張らないが、勿論全力を挙げて頑張ったことになっている。

何か具体的な成果があるとよりよい。論文を完成させたとか、その程度で十分だ。

「なんでそのゼミに入ったんですか?」って追撃が来る場合もある。「先生の授業の仕方が好きだったからです」と正直に言った。「研究内容に興味があったわけではありません」とも。

だってそうだろ。森林に最初から興味持ってるやつがいるか?いるかもしれんが。

 

 

あなたの長所を教えてください。

ガチで見つからないこともあるとは思うが、別に事実である必要はない

こういう人間になりたい、こういう人間が欲しいんだろうな、と思う人柄を長所としてでっち上げればオールオッケーである。

なお、具体的なエピソードは問われるので用意する。どういう場面で発揮されたか、ってこったな。先述の自己紹介での伏線が、ここで活きる。

 

 

最後に何か質問はありますか。

いわゆる「逆質問」

調べればわかることは聞かない。

自分が入社した後をイメージした質問が無難かつ万能。

「後輩にどんな注意をすることが多いですか」「仕事をする上でどのような気持ちを持つことが大切だと思いますか」的なことをおれは聞いてた。

 

 

難易度★★

あなたの欠点はなんですか。

長所とは一変、難しさが急増。

本来なら「協調性がないっす」「努力が嫌いですてへぺろ」とか言うべきところだが、何度も言おう。別に正直になる必要はない

「まあ短所にも長所にもなるよな」「一長一短ってやつだな」と思われる丁度いいものを欠点として語り、その後で「ですが、今申し上げた欠点は言い換えると〇〇ができるということでもあるので、私はそのような面で貢献していけたら」的なことを言えばいい。すべてはネタ次第。

おれは「カリスマ性やリーダーシップがないことが欠点。だけど、一人一人と目線を合わせて話はできるから、信頼関係を築くことはできる」と話した。物は言いよう。

因みに、おれの友達で「欠点はない」と言い切ったやつがいるらしい。よぅやるわ。

 

 

リーダーシップを取った経験はありますか。

なかったので、正直に「ありません」と答えた。勿論、上記の通り「ただし…」と続くわけだが。

似たような質問に「集団の中でのあなたの立ち位置を教えてください」というものもある。これも正直に答えるといい。

おれは高校時代の部活では「部長などではなかったが、チームの弱点を把握し、練習メニューを考えてチームの力を向上させる役割にいた」ことになっているし、サークルでも、まあ似たようなことになっている。

 

 

座右の銘のようなものはありますか。

「人畜無害」と言いそうなのをすんでのところで我慢した。

次におぼろげに頭に浮かんだ言葉が、高校時代、部活の顧問が言っていた言葉、「迷ったらGO」。

そう、迷ったらGOだ。気づけば口に出していた。

 

 

クレームとか結構来るけど大丈夫?

「クレームって言い換えれば向こうから直すべきとこ呈示してくれてるわけっしょ?やることわからんくて手探りの状態よりよくね?」と即座に返答。

我ながら屁理屈が冴えている。

 

 

休日は何をしていますか。

睡眠。ゲーム。いじょっ!
とは言えないので、小説と語彙力強化の本読んでることにした。

もう一つ、アウトドア関連を入れればよかった気はする。散歩とかランニングとか。

活発な若者は気に入られがちだからね。

 

 

気になるニュースはありますか?

急に来ると驚く問題。

幸い、おれは毎日新聞を読む癖があったので切り抜けることができた。

が、もし新聞やニュースに触れない生活をしていれば厳しい質問になろう。あまりにありきたりなことを言ってもよくないだろうし。例えば、今の時期だとコロナとか。何の面白みもない。

就活の時期だけはニュースに目を光らせるべき。特に、志望する業界に関するものは見つけ次第メモしておくとよい。

 

 

尊敬する人は誰ですか。

困ったらエジソン。嘘です。

これに関しては身近な友人とかの方が答えやすいのではないか。あなたの周りに尊敬すべき友人はいるだろうか。いないなら、友達付き合いを考え直すべきだろう。

 

 

苦手な人はどんなタイプですか。

一般的なこと述べときゃいいんちゃう?自己中とか皆嫌でしょ。

「ならそういう人とどう付き合っていく?」と聞かれるかもしれない。付き合わないという選択肢はない。

 

 

あなたは友人からどんな人だと言われますか。

初見でビビる質問。面接では一貫性が大事なので、PRで述べた「長所」と一致させたいところ。何度も言うが、別に正直である必要は(ry

 

 

経済学部に入った理由はなんですか。

経済に興味があったからです!とは言えんかった。なぜならおれは経済を学ぶゼミに入ってないから。

実際、経済学部選んだのなんて一番融通が利きそうっていうか、一番将来の幅が利きそうっていうか、そんな理由だ。なので、正直に答えた。

 

 

就活の軸を教えてください。

就活の軸ってなんやねん。

おれは最後までわからんかった。

正直何言っても平気だと思う。

大切なのはただ一つ。一貫性だ。

後述する「志望動機」に直結する価値観を示すことができるか。それだけだ。

「どのような基準で就職先を決めますか」という質問にも、軸を定めておけば容易に答えられよう。

 

 

難易度★★★

志望動機をお聞かせください。

必ず聞かれるくせして難しい質問。んなもんあるか。黙って内定出せボケカス。おまえらが選ぶんじゃなくておれが選ぶんじゃタコ。

などとは言えないので、真剣に考える必要がある。面接のキモとなる質問だ。

因みに、答えた後で「別にそれうちじゃなくてもよくない?」と聞かれるのは必至。受けない企業も研究して、その会社の強みを知っておく必要があろう。

その意味で、業界研究はなんだかんだ大事。

 

 

今後のキャリアパスを教えてください。

キャリアパスってなんぞ?」と一瞬脳がフリーズした。最終面接で落とされた企業があったが、この質問に上手く答えられなかったことが一因になっている気がする。

具体的な仕事内容もわからないのに、何十年後と想像を膨らませるのは難しい。的外れなことを言えば、研究が甘いと思われる

「今後の業界はどのように変化すると思いますか?」という質問も同じだ。研究大事。

座談会などで社員の展望について質問するのは手だろう。

 

 

弊社の志望度を教えてください。

模範解答の決まっている質問。答えるのは簡単だ。

しかし、続けて他にどこを受けているのかを聞かれた際に、

また、「他社の選考状況を教えてください」という質問も大いにあり得る。これは非常に厄介。

明らかに「より知名度の高い」「より給与の高い」企業があると「ほんまに第一志望?」と疑われる

きちんと業界研究して、その企業の強みを見つけておこう。上手く決まればドヤ顔できる。

また、全くジャンルの違う職種、例えば金融の面接で不動産受けていると言うと、そこに突っ込まれる、などもあり得る。「あくまで御社が第一(にっこり)」という姿勢は崩さずに、先述した「就活の軸」に沿って説明しよう。「ね?軸からはブレてないでしょ?でも一番はあなたよ 」と言えればどうだっていいぜ問題はナアアアアアアアアアシ。

 

 

挫折経験を教えてください。

挫折なんてしたことない。おれぁ順風満帆な人生送ってンだ!

強いて言うなら…失恋?あは☆

とは言えんから、中学時代に成績がダダ下がりしたことにした。その後の解決策も話せたし、まあ及第点だろう。大切なのは、どんな風に考え、自らアクションを起こしたか。

 

 

自分が何をしているのかもわからないまま、就活が終わる。

内定を貰った帰り道、電車の窓から流れゆく景色を眺める。

この先の人生が決まったことへの不安と昂奮が入り交じり、何も考えられない。

 

 

ただ、おれは随分救われた。

おれには、これといって優れたものが一つもない。

なのに、六度の面接を通過して、内定を貰った。

そのうちの一人でも「アウト」判定を出したら、文字通りアウトだったのに。

何か光るものがないと認められないのではないか、と思っていたのに。

 

 

何も出来なくても認めてくれる人はいるのだと、少し、ほんの少しだけど、自信になった。

その意味で、就活は安寧を齎した。

今はこの僅かな安寧を楽しむとしよう。