とらの徒然

ネコ科のペンギン

夢日記 20200101

(うっわ、まーた定期忘れたよちくしょう)

駅の改札の前で、ポケットに手を突っ込んで呆然とする。現金で切符を買おうか迷った末、結局家に戻ることにした。学校に遅刻するのと無駄金を使うのを両天秤にかけた結果だ。時は金なりとも言うが、金もまた金なりだ。当たり前すぎて格言にすらならない。

 

 

季節は冬。コートの襟に首をうずめても寒い。数分前に歩いた道を、逆方向の景色で引き返す。デジャブだ。なぜなら、つい1週間前も定期券を忘れて家に戻ったから。以来、二度と忘れない工夫を自分なりにしたつもりだったのに、どうやらダメだったらしい。

 

 

わかりきっていたが、学校には遅刻した。教室に入ると、ちょうど国語の授業中だった。狭い教室で皆が前を向いて座っているところを見るに、どうやら今回の舞台は高校らしい。後ろの引き戸がガラリと開いた音で、先生やクラスメイトが一斉に振り返る。おれは小さくなってそろーりそろーりと教室に入り、ロッカーにカバンを押し込み、そろーりそろーりと今入ってきた扉から教室を後にした。席に座ることはない。おれには、向かう場所があるからだ。

 

 

廊下を歩く。おれは何故か靴下だ。真冬の廊下の冷たさが足裏からビシビシ伝わってくる。今は授業中なので、廊下には誰もいない。静かな足音だけが、響く。

 

 

階段を上り、また廊下を歩く。言い忘れたが先程の教室は2階で、今は3階を歩いている。おれは目的地に到着すると、引き戸をガラリを開けた。今度は遠慮がちではなく、堂々と。その音に、中にいた背の高い男が身を起こす。

 

 

先程の国語の授業をしていた教室は普通だったが、こちらの教室はやけに古い。扉はボロボロのガタガタ。床は木製でミシミシと音を立てている。そして何より異常なのは、机が一つもなく、布団が二組敷いてあることだ。おれに反応した背の高い男はそのうちの一組、扉に近い方に寝そべっていた。おれは靴下のままペタペタと侵入し、空いているもう片方の布団に潜り込む。

「またか」

「おまえもな」

 

 

しばらく眠りこけた後、絶叫が聞こえて目を覚ます。横を向くと、隣で寝ていた男がいない。今の絶叫は何だったのだろうと、眠い目をこすりながら廊下に出た。声が聞こえたのは階段の方だったか。様子を見に行くことにした。靴下から伝わる床の温度は、相変わらず冷たい。

 

 

階段に辿り着いたが、誰もいなかった。

気のせいか?

首をひねりながら、踊場まで下りる。一応、忍び足で。下をのぞき込むような体で、ゆっくり下りる。

 

 

そして、その姿を見て息をのんだ。

濃紺のワンピースのような装束に包まれ、これまた濃紺のとんがり帽子を被った男が見えたからだ。いや、性別はわからないはずなのだが、何故か男だと直感した。その男は全長3mほどの長い鎌を携えていて、まるで死神のようだと思った。

 

 

死神が何かに気づいたように振り返り、階段から身を乗り出しているおれと、完全に目が合った。途端、おれは脱兎のごとく走り出す。本能が告げる。逃げろ、と。

 

 

全速力で廊下を駆ける。床が冷たいのなんかどうだっていい。今は走れ、走れ、走れ。

振り返らずとも、追われているのが気配でわかった。死神の足音はないが、確かに気配はすぐ後ろまでーー。

 

 

振り返ってはいけないと本能が叫んだが、振り返ってしまった。

その時には既に、漆黒の鎌が目の前でうねりを上げて迫ってきていて。

足はとうに止まっていただろう。

ゆっくり近づいてくる、黒の凶器。足元は冷たいのに、耳元でどくんどくんと熱い音がする。口を開く。声が出ない。死神の顔すら見る余裕がなかった。おれはこの時、完全に停止していた。

止まっていたかに見えた鎌が、一閃を描く。おれの首を貫き、身体が二分する様を、おれは何故か第三者視点で見ていた。勢いで首が少し宙に浮き、血液の弧を描きながらごとりと木の床に落ちる。いや、落ちる瞬間は記憶にない。落ちる直前、視界がぐらりと揺れたところで、おれは現実に引き戻される。

 

 

また、殺された。2020年、初夢。こんなんでいいのか。

夢を見るときは大抵襲われてる気がする。面白そうなので、これから夢日記を軽くつけてみることにしました。よろすく。