とらの徒然

ネコ科のペンギン

カモメと電車

澄み切った青空にはカモメが映える。白が波打つかのように跳ね、すうっと遠くなっていく。そうして彼女らが腰を下ろしたのは、駅を眼下に捉える電線だった。青の空。黒の線。白の玉列。


ガタンゴトンと大きな音を立てて電車がホームに入ってくる。驚いて飛び立つことはない。もうすっかり慣れているのだろう。


カモメにとって電車はどう見えているのか。ふと気になった。まさかニンゲンが作った乗り物だとは思わないはずだ。となると、ミミズやヘビの巨大バージョンのように見えるのだろうか。それとも生物でないことは本能でわかるものだろうか。


その巨大な何かにニンゲンが次々乗り込む風景はどう見えているのだろう。彼女らには、自らの羽根以外の移動手段がないはずだ。別の何かに乗って移動することに感銘を受ける者がいつか現れ、カモメ界の革命家となるだろうか。ただ「見えている」だけでそこから何も学んでいない、考えていないとは思えない。なんとなく。


そもそも、何故カモメは電線に留まるのか。
中でも、駅の近くの電線に。


鳥が電線に留まるのはごく普通の光景だが、彼女らが別の電線に留まるのを殆ど見たことはない。いつも、あの駅を見下ろす電線にずらりと並んでいる。他の電線と一体何が違うのか。


だいたい、電線に留まるメリットはあるのだろうか。電線に留まって餌が見つかるとは思えない。高い位置から俯瞰できるからかとも考えたが、キョロキョロしている節はないから違いそうだ。


単純に電車が好きなのかもしれない。


電車の窓から、整然と並ぶカモメを見つめ返す。
電車が動き出しても、やはり驚いて飛び立つことはなかった。


ねぇ、どう見えている?
一度聞いてみたい。