スカートとパンツ
今日、おれは女子高生になった。
突然の性転換&若返りの衝撃発言ではない。精神的な生態模倣をしたという意味だ。
先に言っておくが、女装ではない。今回のテーマに関係ないから多くは語らないが、おれは男に生まれて本気でよかったと思っている。
昼過ぎ、おれは食料品の調達のために外出していた。
外出といえど徒歩10分程度のスーパーに向かっただけなので、どちらかと言うと散歩に近い。
服装はなんでもいいかと思い、適当に半袖と半ズボンを取った。
この半ズボン、やたらウエストがゆるゆるで歩くとずり落ちてきそうだったけど、まぁ落ちそうだったら押さえればいいか、と軽い気持ちで家を出る。本音を言うと単に履き替えるのが面倒だった。
青天の下、川沿いを歩いていると案の定ズボンが落ちてきた。
断じてパンツを晒すわけにはいかない。20歳の男がパンツを晒したって誰も喜ばない。
逆に喜ばれても困るってもんだ。いくら頼まれたってパンツは見せない。金をくれるなら考え物だが。
ん?
いや、考え物どころの騒ぎじゃない!喜んで見せよう!
なんだそれ。なんだこれ。
パンツ見せるだけで儲かるとかどんだけ楽な商売だよ!
こんなことなら女に生まれればよかったかもしれない。さっき「男に生まれて本当によかったと思っている」と断言したけど、考えを改めた方がいいか?
なお、この発言に女性蔑視の意図はないのでいちいち怒らないように。
いやしかし。パンツを見るために金を払う人間の気が知れない。
パンツは、偶然見られるから嬉しいものではないのか?言わばおみくじの大吉のようなものだと、おれは思っている。その場で偶然出るから意味があり、縁起があり、喜ばしいのであって、大吉しか出ないおみくじや、大吉と書かれた紙自体を購入することに意義を見出す人はいない。
パンツも同じだ。
「パンチラは男の夢だ」と、近所の猫が言っていた。
夢を金で買うなど、それこそ夢がない。そもそもパンチラを金で買ってしまったら「チラ」ではないではないか。見えた瞬間の嬉しさや背徳感がなくなってしまう。そこにあるのはただの布地になってしまう。なんて勿体ない。パンツに対する冒涜だ!
脳内で繰り広げられた議論がひと段落して、ふぅと息をつく。風が心地いい。少し暑いが絶好の散歩日和ーー風?
風に煽られて捲り上がるTシャツ。露になる肌。ずり落ちたズボン!露になるパンツ!
「うぉぉぉぉぉおおおおお」
押さえる対象をズボンからTシャツへとチェンジ。
なるほど、これか。
感動で満ちている。新たな体験。新たな知識。知的好奇心が満ちる歓びを、全身で感じる。
風で捲れるミニスカートを押さえる女子高生とはおれのことだったのか。これぞ生態模倣。片手にタピオカを持てばパーフェクト。
いや待て、タピオカ持ったらスカート押さえられなくね?大抵は右手にタピオカえお持ってれば、左手はスマホを持っている。両手がふさがっているではないか。スカートを押さえるには、文字通り手が足りない。
つまり、風が強い日の野外のタピオカ店周辺ではパンチラ率が高い。これは一つ偉大な発明をしたのではないか??
と、しょうもないことを言って筆を置く。