とらの徒然

ネコ科のペンギン

ドキンちゃん

最近、間食として菓子パンを食べがちだ。
いかにもな発言だけど、おれは太っていない。むしろ、もう少し太らないといけないくらいだ。
決して食べる量が少ないわけではないのだが、何故か太らない。体質だろう。嫉妬に狂った女子高生に刺されてしまいそうだ。まあ、JKに刺されて死ぬなら本望だ。我が人生に一遍の悔いなし。


それはそれとして、今日の夕方、おれはメロンパンを食べていた。
昔からの好物だ。
いや、実を言うと本当に小さいころは、そこまで好きでもなかった。歯の裏にくっつくからと、避けていた節がある。
それが今や好物のリストに加わるくらいなのだから、メロンパンは恐ろしい魔力を秘めている。
服を一着買う金があるなら、メロンパンを20個買うね。


ところでメロンパンの起源はいつなのだろう、と思って調べてみれば、どうやら1930年代まで遡るらしい。一説によればもっと昔まで。如何せん発祥にいくつか説があるらしい。
なんにせよ、天才的な発想をする人がいたもんだ。
あなたのおかげで、おれは今日も最高にハッピーに生きていける。ありがとう。


かれこれ1世紀近くも売れ続けているとなれば、メロンパンは菓子パンの中でもロングセラーの部類に入るだろう。どんなスーパーやコンビニでも、メロンパンを扱っていない店はないはずだ。
しかし、メロンパンは王様にはなれない。
王様はきっと、アンパンだ。


世を震撼させた、かは知らないが、大人気アニメ『アンパンマン』では、アンパンが主役を飾っている。メロンパンはどうかと言うと、脇役中の脇役だ。悲しいね。
ただ、実のところ、アンパンマンのストーリーはよく知らない。テレビで見ていなかったからね。


それでも、流石に主要な登場人物くらいは把握している。
まずは主役のアンパンマン
悪ガキに顔をちぎりとっては分け与えて更生させる自己犠牲の擬人化、もとい擬パン化のような存在。
おれだったら、目の前にアンパン顔の生物が飛んできて顔をちぎり出したら腰抜かすけどね。
あの世界の住人は警戒心を地元に置いてきたか、もしくはアンパンマン御一行に洗脳されているに違いない。


そして親友の食パンマン。
しかし、親友と思っているのは食パンマンだけで、主人公のアンパンマンは食パンマンを友達だと思っていない。完全な片想いだ。泣ける。
これは、主題歌の歌詞「愛と勇気だけが友達さ」からわかることである。
食パンマンは友達じゃなかったのだ。初めて歌詞を知ったときには驚いたものだ。
アンパンマンの自己犠牲の精神には見習うべきところがあるけど、もうちょっと周りを見てもいいとは思う。
あなたを大切に思う仲間もいるのよ!あなたが傷つくことで心を痛める人もいるのよ!


続いてカレーパンマン
実際この人、否、パンはどういった立ち位置なのか。
なんかちょっとうざいやつ、という印象をおれは勝手に持っている。確か、「オレのカレーが噴火しちゃうぜ〜」が口癖だった。
そして、そのカレーパンマンの彼女が確かメロンパンナちゃんだ。
とはいえ、メロンパンにカレー(意味深)をかけるのはいささか乱暴が過ぎると思う。
カレーパンマンは鬼畜で非道な変態だ。けしからん。絶対に許すな。


味方サイドには、他にジャムおじさんとバタ子さんがいた。
バタ子さんはジャムおじさんの愛人だったと記憶している。確か、夫婦ではなかったはずだ。
ただ、ジャムおじさんにもバタ子さんにも配偶者がいるという話は聞いたことがないから、2人とも独身だと仮定すると、愛人という表現には違和感が残る。


あとは犬のチーズな。
なんか顔が腹立つ。


味方サイドで知っているのはこれくらいなので、敵サイドに移ろうと思う。
といっても、バイキンマンドキンちゃんしか知らないのだが。


ところで、皆はドキンちゃんをどのように発音しているだろうか。
おれは昔から、キにアクセントを置いて、ド(↓)キン(↑)ちゃんと発音している。
「花瓶」「車輪」「降臨」「出目金」「土偶」「ドキン(心臓の音)」


しかし、母はこれをおかしいと言って笑った。
母は、ドにアクセントを置いて、ド(↑)キン(↓)ちゃんと発音した。
「試練」「未練」「ドキン」


21年間ド(↓)キンと発音してきたので、おかしいと指摘されて困惑した。
一体どちらが正しいのか。
考えてみることにした。


第一、我々は彼女を「ドキンちゃん」と呼ぶが、本来の名前は「ドキン」のはずである。
「ちゃん」は愛称だ。多分。名前じゃない。多分。
そういえばバイキンマンは彼女を呼ぶとき何と呼ぶのだろう。
まさか敵のボスたる存在が女の子をちゃん付けで呼ばない……よな。
とにかく、ドキンちゃんの名前は「ドキン」なわけだ。そうなるとド(↓)キンよりもド(↑)キンの方がしっくりくる。
「わたしはド(↓)キン」
「わたしはド(↑)キン」
うーん、後者の方が可愛らしい。


しかし、待ってほしい。
ドキンちゃんは曲がりなりにも悪役である。
子供向けアニメの悪者に可愛らしさを求めてどうする。
この物語は勧善懲悪なのだから、善は善、悪は悪だ。悪役にも実は大切な家族がいて……といったややこしいことにはならない。悪は徹底的に悪なのだ。
そう考えると、一見響きの悪い「ド(↓)キン」も捨て難い。


ここでふと、疑問に思う。
ドキンってなんだ?


アンパンマンのキャラクターは全員名前に意味があった。
アンパン、食パン、カレーパン、メロンパン、ジャム、バター、チーズ、バイキン。
ドキンと聞いてパッと思いつくのは擬音語だが、彼女だけ擬音語というのも変、というか仲間はずれで可哀想ではないか。


ドキンちゃんバイキンマンの仲間だ。
ドキンはバイキンの仲間……。
それに気がついたとき、視界が一気に晴れたかに思えた。
これだ。これしかない。
広い空の下で駆け回る少年のように、おれは目を輝かせる。


ドキンは「キン」の一種なのではないか。
バイ「キン」。ド「キン」。ド菌。


間違いない。だからバイキンマンとセットなのだ。
菌類だから!


こうして、おれの中で結論が出た。
発音は、ド(↑)キンではない。
ド菌なのだから、ド(↓)キンだ。


やはりおれは間違っていなかった!最高の気分。今年一番の爽快だ。


ところで……実際はどっちなんですか。
テレビ見てた人、教えてくれ。